太陽は、地球から平均距離で1億4960万キロも離れているのですが、しかしもっとも身近な天体です。
地球に光と熱を与え、気象現象をつかさどり、植物に光合成を起こさせ、あらゆる生命に活力を与えてくれます。
深海の熱水鉱床周辺には、太陽光と熱に依存しないバクテリアもいますが、こういう生命はごく例外的です。
そのような太陽について、日本人は「お日さま」、「お天道様」と呼びます。あきらかに感謝の気持ちが込められた呼び方です。
生活を明るく照らしてくれるありがたい存在。
特に、農耕にとってはなくてはならないもので、太古の昔から農耕儀礼と結びついて神格化されることもありました。
日本神話の天照大御神も太陽神ですし、古代エジプトのラーやホルスも太陽神です。
そのように、太陽を崇拝する宗教は世界各地の広い範囲に見られます。
そのため、太陽をシンボル化した記号や紋様は、古来、世界各地で、さまざまな宗教、神話、神秘思想、占い、紋章、旗章などに用いられています。
それらに込められた意味を振り返ってみましょう。
日の丸
身近なところから、日本の国旗、「日の丸」です。そもそも「日本」の「日」って太陽です。
「日本」という国号は天武天皇の時代くらいから使われるようになりますが、昔から日本人は自分たちと太陽に深い結びつきがあると考えていたのです。
それは日本神話の最高神が天照大御神であることにもあらわれていますし、厩戸皇子が隋の煬帝に送った「日出處天子…」で始まる国書にも、
それはあらわれています。
その根源には、やはり農耕と結びついた宗教的意識があります。神道は元来、アニミズム(自然崇拝)の性格が強い農耕儀礼から発生しています。
現代でも、宮中で行われる農耕にかかわる儀式は、天皇の重要な仕事となっています。
余談ながら、パラオの国旗は水色の地に黄色い円と、日の丸に似ているデザインです。
意図してそうしているそうですが、黄色い円があらわしているのは「月」です。
古代エジプト
日本と同様、エジプトでも太陽神ラーやホルスが崇拝されました。
円の中心に「・」を打つシンボルが太陽または太陽神を示すものとしてヒエログリフに用いられました。豊穣や生命力、死からの再生を象徴するものでした。
太陽と関連して、丸く固めた糞を転がして運ぶフンコロガシという昆虫が、「死と再生をつかさどるもの」=スカラベとして神聖視されました。
また、ヒエログリフによくあらわれる「ホルスの目」もモチーフとして人気があります。やはり太陽を象徴するマークです。
偶然ですが、古代中国でも「○に・」は太陽をあらわす象形文字で、「日」という漢字の元になっています。
古代ローマ
12月25日はイエス・キリストの誕生をクリスマスとして祝う日となっていますが、実はイエスの誕生日ではありません。
この日を祝祭の日とする習俗は古代ローマに由来します。
古代ローマではギリシア神話のヘリオスと習合したソル・インウィクトゥスが太陽神として信仰されていました。
12月25日はほぼ冬至に近いですね(年によって一日くらい変動します)。冬至の日は昼の長さがもっとも短くなります。
太陽神の勢いがもっとも弱まり、その翌日から再び勢いを取り戻していく日ということで、太陽神の「死と再生」の日とされました。
シンボルとしては、円と太陽光をあらわす放射状の線が使われます。
ヘリオスの冠が元になっており、ニューヨークの自由の女神がかぶっている冠と同じものです。
太陽十字
円と十字を組み合わせたシンボルです。ヨーロッパの石器時代、青銅器時代から使用され「ケルト十字」や「卍」のマークがこれから派生しています。
別名「太陽車輪」ともいいますが、太陽というよりは光明神を象徴するものです。
非常に古い時代からヨーロッパの広い範囲で用いられていたことから、ヨーロッパ統一を象徴するマークとイメージされ、
もっとも古いヨーロッパ統合運動である「国際汎ヨーロッパ連合」の旗に採用されています。
また、ナチス・ドイツのハーケンクロイツも太陽十字から派生したものです。
また現在、ヨーロッパの白人至上主義団体やファシズム団体のマークとしてしばしば用いられています。アメリカのクー・クラックス・クランも使っています。
欧米ではそうした政治的意味を表現するものと見なされる可能性があるので、使用には慎重になるべきでしょう。
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